仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)92号 判決 1950年3月29日
被告人
福田栄市郞
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人佐藤欽一の控訴趣意第一点について
原判決書によれば証拠中に被告人の檢察官に対する供述調書(副檢事の被告人に対する第二回供述書)を挙げてること、同調書記載によれば被告人が本件犯行を自認したこと、そして右は勾束中の取調に係ることは何れも所論の通りであるが原判決が証拠にとつた原審証人内山晴隆、同加藤健吾、同安田すみの供述によれば本件犯行現場たる板柳町第一小学校構内居住者である安田すみが被告人の本件犯行を現認し之を追い被告人居宅入口までその後をつけ被告人がその居宅に贓品である自轉車を持ち込んだことを見届けその犯行を確認したことが認められるので同女は被告人の現行犯を確認追跡したに外ならないから自ら被告人を現行犯として逮捕し得べきを之を避け時を移さず所轄板柳警察署に届け出で同署において即刻本件を檢挙したことが認められるし客観的に之を檢討するも右諸証拠により右届出は本件盜難被害発生と時間的に接着し届出人の立場とその前後の言動により現行犯逮捕の要求と解するのが相当といわねばならない。從つて所轄板柳警察署司法警察員が被告人の本件犯行を現行犯と認め令状をまたず被告人を逮捕し被告人が所持する贓品たる本件自轉車の保存につき適宜の処分に出づることは刑事訴訟法の容認する所で之を所論のように違法となす根拠を発見し難い。